『イマドキの動物 ジャコウネコ』からの引用5
科や条件が違うとは言え、愛犬君が犬のマーキングスポットみたいなところをいつまでたってもずっと嗅いでいるのは、常に違った個体が溢れているからなのか、単純に記憶力が弱いからなのか、と考えてしまいます。記憶力、悪そうなんですよね、愛犬君。
彼女が示したのは、糞の匂いから、その糞が見知らぬ個体のものなのか、よく知った個体のものなのかを正確に判断できるということである。彼女は、まず、ネコカフェに協力をお願いして、餌条件を統一したうえで、飼われているイエネコの糞を手に入れた。これを別のネコカフェにもっていき、そこで飼われているイエネコに匂いを嗅がせ、嗅いだ時間をストップウォッチで記録した。同様の実験を、実験対象としたネコ、同じネコカフェで飼われている別個体の糞に対してもおこなった。
結果はひじょうに明確だった。実験対象にしたネコはいずれも、(一)自分の糞やふだん一緒にすごしている個体の糞に比べて、別のネコカフェ由来の糞をかぐ時間がはるかに長かった。しかし、(二)この実験を繰り返すと、見知らぬ個体の糞を嗅ぐ時間も急速に短くなっていくが、(三)嗅がせる糞を見知らぬ別個体のもの変えると、やはり嗅ぐ時間が長くなった。すなわち、イエネコは、糞がよく知った個体のものか、見知らぬ個体のものであるかをはっきりと判別できたのである。しかも、一度嗅いだ見知らぬ個体の糞の匂いを長期間にわたって記憶できるのだ。
イマドキの動物 ジャコウネコ P168『第3章 種子散布者としてのパームシベット』 より
イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記 (フィールドの生物学)
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