思考の消化器官

色々な感想文とか。生活のこととか。

『さえずり言語起源論』からの引用2

昔の日本人が飼っていた鳥の歌に注目していなかった、なんてことがあるのかなあ、と思ってしまいました。現在の日本で歌の鳥といえば、ウグイスだと思いますが、当時の日本でそれぞれの鳥に別々の役割みたいなものがあったのでしょうかね。

ジュウシマツは野生の鳥ではない。東アジアに生息するコシジロキンパラが祖先であるとされてきたが、他の説もあった。コシジロキンパラがそのままジュウシマツになったか、または、これにギンバシやシマキンパラなど類縁野鳥が掛け合わされ、ジュウシマツになったとされていた。このことは、江戸時代に書かれた『百千鳥』という本や、大正時代に鷹司信輔により書かれた『飼ひ鳥』という本に説明されている。
これらの説を要約すると、一七六二年に、九州の大名であった壬生忠信が何羽かのコシジロキンパラを南中国より輸入した。コシジロキンパラは飼育下によく適応し、自種はもちろん他種の鳥の卵を抱卵し孵化させる能力が優れていたため家禽化が進み、安政年間(一八五六年前後)には白色変異があらわれ、幸せを呼ぶ鳥として愛玩されるようになった。大家族の姉妹のように(?)仲がよい鳥ということで、十姉妹と呼ばれて親しまれ現在に至っている。
コシジロキンパラが輸入されてから現在に至るまでに出版された飼育書のどれを見ても、育雛能力についての記述はあるが、この鳥の歌についての記述がない。日本人はこういうことに関してはまめだから、歌に注目していたなら必ずなにか書くはずだ。でも書かれたものがない。このことから、この鳥は主に育雛能力に関して人為選択され、歌に関して人為選択された歴史はないと考えられる。
ヨーロッパにおいては、約百年前よりコシジロキンパラはオランダに輸入され、アミメキンパラなどと掛け合わされ、主に羽毛の美しさが人為選択の対象となり、ヨーロッパジュウシマツとなった。

さえずり言語起源論 P41『3 ティンバーゲンの理想』 より

さえずり言語起源論――新版 小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波科学ライブラリー)

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