『さえずり言語起源論』からの引用4
DJジュウシマツ!かっこういい!やはりDJはモテるんですなあ…。
自由交配ゲージで育ったオスのヒナたちには、複数のオスから歌を学んでいるものもいることがわかってきたのである。これはいくつかの異なる歌をうたい分けるという意味ではない。言うなれば、ヒナたちは、親世代の歌でDJをやっていたのである。あるオスの歌のこの部分を切ってきて、もう一羽のオスのあの部分を切ってきて、そしてそれらをこうやってつないで、ほらかっこういいだろう。ヒナたちは平たく言えばこういうふうにして、自分独自の歌を作っていたのである。
図23に、自由交配ゲージで育ったあるヒナが誰からどのように歌の部分を切り出して貼り付けたかを示す。この鳥は、実の父親を含む三羽のオスから歌の一部を切り取り、これらをいろいろな順番で貼り合わせて独自の歌を作ったことがわかる。
小鳥たちはどのような手がかりで親世代の歌の一部を切り取っていたのだろう。これを調べるため、高橋は、師匠となった鳥の歌を詳細に分析し、ある音から他の音に移り変わる確率(遷移確率、第2章参照)と、二つの音の並びの間の時間を測定した。すると、間の時間が長いほど、そして、遷移確率が低いほど、そこが切れ目となることがわかった。長い切れ目と長い切れ目、低い確率と低い確率に挟まれた間の部分が切り取られ、学習されるのである。しかしここにも個性が出てくる。実際にどこを切り取るかには、個体差がある(図24)。全体としての傾向はあるが、個別には趣味が反映されると言ってよいだろう。
このように、長いものを切り分けることを「分節化」と呼ぶ。分節化は、遷移確率と空き時間が手がかりになる。ジュウシマツの歌が複雑なのは、この分節化の能力によるのである。
さえずり言語起源論 P103『8 歌は編集され学ばれる』 より
さえずり言語起源論――新版 小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 岡ノ谷一夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (14件) を見る