『ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ』からの引用6
ニホンザリガニは寒い地方にしか住んでいないからか、交尾から産卵の時間がとても長いのですねえ。四月頃だそうです。半年もの間、産卵せずに抱えているのですね。大変です。まあよく考えれば人間は半年以上抱えている訳で、本当に頭が下がります。
ニホンザリガニは、水温が一〇℃を下まわると交尾を始めます。彼らの生息地では一〇月です。ニホンザリガニの交尾は荒々しく、まずはオスがハサミで無理やりメスを挟んでつかまえます。その後、オスとメスは重なりあい、理由は不明ですが、必ずオスが下になって交尾を行います。
オスは交尾が始まるとメスをつかんだハサミを離して、自分の腹部を丸めてメスの腹部を抱え込むようにします。そして、歩くための脚(交尾肢ではない脚)の根元付近にあるカギ爪を、メスの体に引っかけて、巧みにメスを固定します。オスの精子は交尾肢の精子溝を通り、メスの腹部にある受精嚢にたどりつきます(第3章参照)、精子は一つの塊(乳白色の精包)となって、受精までメスの受精嚢で貯蔵されます。交尾の時間は長く、二時間以上もかかります。しかも昼夜を問わず行われるので、一〇月頃に北国の小川を歩いてみれば、ニホンザリガニの交尾によく出くわします。
ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ P74『4 一年と一生』 より
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