思考の消化器官

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『スズメ つかず・はなれず・二千年』からの引用2

一般的ではないものの、今でもスズメを食べることはありますが、どの程度の消費量があるのでしょうか。食用として輸入していることが多いのでしょうかね。都市部のスズメは狩猟とは無縁でしょうから、人を警戒しないようになるのも無理はないかもしれません。

昭和以前のことは正確な記録がないのでわかりませんが、少なくとも昭和に入ってからは、日本人は毎年、食用・駆除のために数百万羽のスズメを捕まえてきました。その前の大正時代の文献には、スズメが繁殖に失敗した原因として、ヘビ、ネズミ、カラスによる捕食と並んで、「児童ノ卵雛採取」とあります。子供がいたずらで、卵やヒナをとっていたのです。今の70~80歳代の方に聞くと、今の子供が昆虫採集をするような感覚だったようです。
つまり、人間はスズメに対して、かなりの自然選択(人為選択というべきかもしれません)をかけてきたことになります。ひょっとしたら、集団の数%に相当する数に対して、毎年影響を与えてきたのかもしれません。これだけやれば、スズメにとって、人間はヘビやタカなどの捕食者と同じか、それ以上に敵視すべき存在かもしれないのです。人に対して警戒心の強いスズメのほうがより子供を残しやすいでしょうから、天敵に対して警戒するのと同じように、人を警戒する性質を生まれながらにもつスズメが多数を占めるようになっていても、おかしくありません。
でもそれなら、人から離れて暮らすスズメが増えてもよさそうです。しかし、人のいない自然な環境には、すでにほかの鳥が生息しています。しかも、スズメは長い間、人のそばで生活をし続けていたため、自然環境に戻るのはもはや難しいのかもしれません。人のそばで生活しつつ、人に対する警戒を怠らないというのが、スズメなりの「妥協案」なのかもしれません。
しかしながら、最近、スズメの人嫌いが薄らいできた気がします。人に見られていてもまったく気にしないで、巣に餌を運ぶスズメもいます。さらには、人の手から直接、餌をもらう「手乗りスズメ」も東京などでは出現しています(図27)。以前のように捕獲されることも減り、子供にいたずらされることも減ったので、スズメにとってもはや人間が脅威でないのなら、警戒するほうが損です。人から餌をもらうのを躊躇する硬派(?)なスズメよりも、もらえるものはもらう、というスズメのほうがより多くの子を残せるはずです。人とスズメの関係も、だいぶ変わってきたのかもしれません。

スズメ つかず・はなれず・二千年 P38『3 人がいないと生きていけない?』 より

スズメ――つかず・はなれず・二千年 (岩波科学ライブラリー〈生きもの〉)

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