『スズメ つかず・はなれず・二千年』からの引用1
そのままにしても死んでしまっていたかもしれないにせよ、平均寿命を押し下げる手伝いをしてしまったのかなあ、という気持ちはまだ残っていますね。とはいえ、人間が住んでいる環境とかけ離れた場所ではないにしろ、自然はやはり厳しいなあ。
飼育下では、15年生きたという記録があります。飼育下のものは餌も十分に与えられますし、病気などにもなりにくいので、一般に、自然条件下よりも長命です。
日本における自然条件下での寿命の最長記録は、2293日、つまり6年と3ヵ月ちょっとです。これは、さきほどの標識調査の結果からわかることで、足環をつけて放鳥されてから、次に捕獲されるまでの年数ですから、これ以上生きたことは間違いありません。
では、自然条件下におけるスズメの平均的な寿命はどれくらいかというと、正直、よくわかりません。平均寿命を知るには、生まれた個体がいつ死んだかを知る必要がありますが、それを調べるのはとても難しいのです。
とはいえ、大まかにでも寿命を知りたいので、数少ない記録や、海外の記録、スズメに近い種の値も参考にしつつ、計算すると、こんな風になります。
生まれたばかりの卵の平均余命:6・5ヵ月
孵化直後のヒナの平均余命:10ヵ月
巣立ち直後の幼鳥の平均余命:11・5ヵ月
1年目の冬を乗り切って成鳥になった個体の平均余命:2年4ヵ月
巣立ち直後の幼鳥の平均余命は1年弱なので、「え、じゃあ巣立った年の翌年にはみんな死んでしまうの」と思ってしまいそうですが、そうはなりません。人の場合は、平均寿命が80歳であれば、80歳前後に死亡する人が多いのですが、スズメの場合は、多くのものが若いうちに死ぬので、平均値を下げてしまうのです。
スズメ つかず・はなれず・二千年 P34『2 スズメの素顔』 より
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