『皮膚感覚の不思議』からの引用5
時々「痒くしなければ、吸わせてやるのに」みたいなことを言われていますが、人間が勝手に痒くなっているだけのようです。乳幼児は痒くならない、とありますがどのくらいの時期から抗体が増えてきて痒くなり出すのでしょうかね。
蚊が人を刺すときには、血液が凝固しないように唾液を注入する。蚊に刺されると痒くなるのは、その唾液に含まれるある種の酵素が抗原となって、アレルギー反応を起こすからだ。
だが、実際に蚊の唾液中には、ただちに皮膚反応を起こすほどのヒスタミンは含まれていない。だから蚊に刺された経験の少ない乳幼児は、刺されても痒くならない。また大人でも、異なる大陸の蚊に刺されても、すぐには痒くならない。まだ抗体をもっていないからだ。ところが繰り返し同じ種類の蚊に刺されていると、やがてその蚊の唾液(抗原)に対する抗体が増えてくる。するとアレルギー反応を起こすようになり、痒くなってくるのである。
蚊がヒスタミンを大量に人間の体内に注入して、痒みを引き起こしているわけではない。人間の方が勝手に抗体を作って痒がっているのである。
皮膚感覚の不思議―「皮膚」と「心」の身体心理学 P121『3-4 「痒み」の進化論』 より
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