思考の消化器官

色々な感想文とか。生活のこととか。

『パーソナリティ障害』からの引用

自分が支えになれる、とか思うことはなさそうだけど、相手がどういう人であったとしても「変わらない」ことは結構大切だと思っています。お前はもっと変わろうと努力しろよ、という声が聞こえてきそうですが…。

境界性パーソナリティ障害の人に接する場合、常に心に置くべき大切なことは、変わらないことが何よりもの支えになるということである。境界性パーソナリティ障害の人は、気分においても、周囲への態度においても、めまぐるしく変化しやすい。すごく気分がよいときは、周りの人間のこともすばらしい存在のように感じるが、思い通りにならないことが生じた途端に、気分は最悪、怒りを露わにし、非難を始めるということになりかねない。
大切なのは、いいときも、悪いときもできるだけ一定の態度で接するということだ。一緒に一喜一憂しすぎたり、同情したり、本人のペースに合わせて、盛り上がりすぎると、たちまち本人の気分の渦に飲み込まれてしまう。むしろ、本人の気分のベクトルを打ち消す方向に、冷静な視点で言葉をかけ、いいときも悪いときも、あっさりと接するようにしたほうが、長く支えになることができ、それが結局は、本当の援助につながる。
よくある最悪のパターンは、最初のうちは、本人の話を長時間かけて熱心に聞き、困ったことがあれば自分が力になるというようなことをいい、一気に盛り上がってしまうのだが、本人が次第に依存的になって、どんどん関係や助けを求めてくるため、すっかり疲れてしまい、途中で投げ出してしまったり、突き放してしまうというものである。
実際、こういうパターンは、しばしば起こる。この障害の性質を知らない友人や家族は無論のこと、プロフェッショナルであるはずのセラピストや精神科医でも、こうした失敗を犯すことがある。
そこで一番傷つくのは、境界性パーソナリティ障害を持つ本人であり、人は結局、最後には自分を見捨てるのだという不幸な人間観を強化してしまうことになる。それは、この障害を克服するのとは、全く逆方向なのである。

パーソナリティ障害 P88『第三章 愛を貪る人々 境界性パーソナリティ障害』 より

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