思考の消化器官

色々な感想文とか。生活のこととか。

『生物から見た世界』からの引用2

コンパスの実験は本当にそうなるのでしょうかね。背中だと自分一人では出来ないので、今度試してみようと思います。人間は口腔内と指先で最も場所を区別出来る、というのは幼児の頃は口で確認して成長するごとに指で確認するのを考えると納得ですね。

触空間(Tastraum)の基本的構成要素は方向歩尺のような運動の大きさではなくて、何か確固としたもの、つまり場所(Ort)である。場所もまた主体の知覚標識のおかげで存在するもので、環境の物質に結びついた形成物ではない。これを証明したのはヴェーバーであった。コンパスの二本の脚を一センチ以上開いて被験者の首筋につける(図9)と、被験者は二つの先端をはっきりと区別できる。つまり、それぞれの脚を別々の場所に感じる。次にコンパスの二本の脚の間隔を変えずに、それを被験者の背中にそって下ろしていくと、被験者の触空間では二本の脚がだんだん近づいていき、ついには同じ場所を占めるようになるのである。
このことから、われわれは触覚の知覚記号のほかに場所感覚のための知覚記号ももっていることがわかる。これを局所記号(Lokalzeichen)という。それぞれの局所記号は触空間の中に一つの場所を生みだす。接触によってわれわれに同じ局所記号を引き起こす皮膚の領域は、その皮膚の部位が触れることについてもっている意味によって大きさがひじょうに異なる。口腔内に触れる舌先とともに指先ではその領域が最も小さく、したがって最も多数の場所を区別できる。われわれがある物体に触れて調べるとき、われわれは触っている指先を使ってその表面に細かい場所のモザイク(Ortemosaik)を与えていく。ある動物にとっての場所を対象とした場所のモザイクは、視空間の場合と同様、触空間の場合にも、主体がその環世界の事物に与えるものであって、けっして環境に存在しているものではない。

生物から見た世界 P37『1章 環世界の諸空間』 より

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)

丸善&ジュンク堂書店ネットストアで詳細を見る