『食の文化史』からの引用2
最近は、語源や言葉の成り立ち、みたいなお話は話半分どころか話1/3くらいで聞いているのですが、ただ聞いている分には面白いですよね。「オマナ」とか宮中で本当に使われているのでしょうかね。初版1975年の本ですから、40年以上前のことで、もしかしたらその当時は使われていたのかも知れませんが…(もちろん、現在でも使われているのなら、それはそれで面白い話です)。
サカナということばはもと「酒菜」と書いた。奈良時代には魚でも野菜でも、副食物をすべて「ナ」と呼んでいた。「酒菜」は酒と共に食べるおかずのことで、野菜だって鳥の肉だってサカナだった(こんにちでは「人のうわさ」を「サカナ」にしてビールを飲んだりする)。そのうち特に上等のものということで、魚だけをサカナというようになった。
ところが、魚を尊ぶ気持はさらに進んで、いっそ「ほんとうのおかず」という意味で「真菜(マナ)」とも呼ばれるようになった。このことばの方は庶民から離れていったらしく、あまり単独では使われないが、マナイタ(魚を切るための板の意味)、マナバシ(魚用のお箸)といったことばの中に残っている。「マナ」はまた、現在の宮中での日常語の中に残っており、魚のことを「オマナ」といい、サケ(鮭)のことは赤い魚という意味で「アカオマナ」というそうだ。
さらにその後、魚を「美味(おいしいものの意)」とも書き、「タメツモノ(味のよいもの)」とか「イオ(ウオの古語)」とか読んだ。とにかく、こうした魚の呼び名の移り変りからも、魚は古くから日本人の食生活にとって最高のものとして愛されて来たことがわかるのだ。
食の文化史 P39『魚と日本人』 より
- 作者: 大塚滋
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