思考の消化器官

色々な感想文とか。生活のこととか。

『イマドキの動物 ジャコウネコ』からの引用3

時々、TVなどでゾウに襲われる映像を観ることがありますが、あの巨体に迫られたら相当恐ろしいですよね。それだけで死ねそうです。アジアゾウの方が比較的性格が荒いみたいですが、そういえば動物園でもアジアゾウはみたことがないかもしれません。

一度だけ、本当に死の危険に瀕したこともある。マッド・ボルケーノでシベットの電波を探しているときのことだ。ヘッドランプの電池が弱くなってきた。満月で雲一つなく晴れわたっている。晴天の日の満月は驚くほど明るく、ヘッドランプの光量が低下しても、発信機の電波を手掛かりに動物を探すには不自由しない。マッド・ボルケーノを横切ろうとゆっくり歩いているときのことだ。一五メートルほど先で、何やら大きいものが動く。なんとゾウである。そのとき、ヘッドランプの光を当てたのが、ゾウの気に障ったらしい。ゾウは突然、本当にトランペットのような声をあげながら、走ってこちらに向かってきた。私は、慌てて、走って逃げた。死にもの狂いで。
しかし、ゾウの足はおそろしく速かった。もの一〇メートルもいかないうちに追いつかれ、ゾウの鼻でガツン。私の体は、ゴムまりのように数メートル弾き飛ばされた。その後のことは何も覚えてない。気を失ってしまったからだ。気がついたときには、天空には満天の星空とまん丸のお月様がぼやけて見えた。何が起こったのかを理解するのに、しばらく時間がかかった。

それ以降、ゾウにはいっそうの注意を払って調査するようにした。調査エリア付近でゾウの目撃情報があった場合、夜の個体追跡は一切やめにした。おかげで、再び危険な目に合わずにすんだが、ゾウに襲われたあの瞬間は、いまだに夢に見る。

イマドキの動物 ジャコウネコ P107『第2章 タビンの森のパームシベット』 より

イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記 (フィールドの生物学)

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