『イマドキの動物 ジャコウネコ』からの引用2
外来種だとすると、江戸時代の「雷獣」は何だったのでしょうかね。台湾由来であれば、江戸時代以前にすでに流入してきていてもおかしくはない気もしますが。少し前に住んでいた地域ではハクビシンをよく見ましたが、それほど遠くない現住所では、今まで見たことがありませんね。外来種であれば、見かけない方が良いのですけれども。
日本に棲むハクビシンが土着の動物であるか、それとも近年人工的に持ち込まれたものが野生化したのかについては、古くから議論がある。その起源が疑われるのは、(一)分布域が連続しておらず、大陸からの移動経路となる九州や北海道に連続的に生息していないこと、(二)日本ではジャコウネコ科の化石が見つかっていないこと、(三)戦前から戦後にかけて、毛皮を利用するために輸入・飼育されていた時期があることが理由となっている(羽山ほか 二〇〇七)。しかし、江戸時代に「雷獣」として描かれているのがハクビシンだという説もあり、在来種か外来種か、長年にわたって議論が続けられてきた。
近年の遺伝学的な研究によって、ハクビシンが外来動物である証拠が得られつつある。二〇一〇年に発表された論文によれば、日本のハクビシンは、台湾起源の可能性が高いらしい。東日本に生息するハクビシンと西日本に生息するハクビシンのミトコンドリアの配列は、それぞれ台湾西部と台湾東部のものと近いらしく、両地域のハクビシンの起源が異なる可能性も指摘されている(Masuda et al. 2010)。
イマドキの動物 ジャコウネコ P82『第2章 タビンの森のパームシベット』 より
イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記 (フィールドの生物学)
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