『ヒドラ 怪物?植物?動物!』からの引用
食べて相手の武器を取り込むって何だか凄いですね。創作物に出てくる肥大化していく悪役的な感じに、何でもかんでも取り込む、という訳ではありませんが、凄い特殊能力な感じがします。
多くのヒドラ類の刺細胞は、捕食者たちを寄せつけない、強烈な武器である。
ところが、さすがに海は広い。この刺細胞をものともせず、ヒドラ類のポリプを好んで「爆食」する生物がいる。ミノウミウシ類(図37)である。背中に多数の紡錘形の突起があり、この外観がミノを背負っているようすにそっくりということで、この名前がついているようだ。彼らの食欲は実に旺盛で、体長が二センチメートルくらいのミノウミウシの場合、茎の高さ数センチメートルで数十本程度のヒドラ類のポリプ群体だと、一日以内に食べつくしてしまう。
このミノウミウシ類、ヒドラ類のポリプの上を這いながらバクバクと食べて飲み込んでいくのだが、ただ食べるだけではなく、食べて取り込んだ刺胞を背中のミノ先端の袋の中に貯めこんで、ちゃっかり自分の武器として利用する(盗刺胞とよばれている)。まさに爆弾どろぼうといえる。ただ、刺胞の攻撃を免れているわけではないらしく、ヒドラを食べている最中には実際かなりの刺胞攻撃をうけていて、一部の刺胞だけが未発射のまま取り込まれる、ということらしい。きれいに取り出された未発射の刺胞は、ミノ先端の刺胞嚢という袋の中にある、刺胞食細胞という独自の細胞内に包み込むようにして取り込まれ、ミノの先端に並べられる。
ヒドラ 怪物?植物?動物! P80『5 出会いと共生のストーリー』 より
ヒドラ――怪物?植物?動物! (岩波科学ライブラリー〈生きもの〉)
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