『シロアリ 女王様、その手がありましたか!』からの引用7
長寿で産みまくる女王と比較的短命でクローンを作ってそれほど産まない女王の違いですね。似たように見える昆虫でもこんなにも繁栄するための戦略が違ってくるのですね。面白いです。
一般に社会性昆虫では、コロニーが大きくなると働き手(ワーカー)の数も増えるから、どんどん子どもをつくらない手はないのだが、彼女らは一匹で、それに見合った速度での産卵を実現させているのである。たとえば、キノコシロアリ属の女王は一日に二万六〇〇〇~八万六〇〇〇個、オオキノコシロアリ属では三万六〇〇〇個、テングシロアリ属では三九〇〇個もの卵を産むと言われている。
しかしこれは、移動する必要のない女王だからこそなせる技である。たとえばシュウカクシロアリ科やシロアリ科、イエシロアリ属など一部のミゾガシラシロアリ科のシロアリは、地中、樹上などに巣をつくり、そこから蟻道を延ばして外で採餌する。このように巣と餌場が分離した営巣様式のシロアリでは、強固に作られた巣は移動することがないので、女王は一生移動する必要がない。
一方、ヤマトシロアリの女王はそうはいかない。複数の朽ち木を地下の蟻道でつないだものがヤマトシロアリの巣であり、朽ち木は巣であると同時に餌でもある。今いる朽ち木を食べ終われば、別の場所に移動しなければならない。このように巣場所を移動させながらコロニーを成長させていく営巣様式では、女王は自力で移動できる大きさまでしか卵巣を発達させることができないのだ。じっさい、ヤマトシロアリの女王が一匹で産むことができる卵の数は、一日あたりたかだか二五個程度である。
シロアリ 女王様、その手がありましたか! P66『4 女王の分身の術』 より
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