思考の消化器官

色々な感想文とか。生活のこととか。

『シロアリ 女王様、その手がありましたか!』からの引用6

人間で良かったなあ、と思えてしまう世知辛さです。まあ本質的には人間も大差ないのかもしれませんけれども…。

アリやハチと異なり、シロアリは自分自身をグルーミングできないため、パートナーがいなければ、病気の感染によって死亡率が急上昇してしまうのだ。単為生殖能力があるとはいっても、シロアリは一匹ではいきていけない性なのである。
二雌ペアによるコロニー創設では、自分の生存が相手の生存にかかっているため、メス同士がきわめて仲良く利他的に振る舞う。体重差のある二匹のメスで創設を開始した場合、小さいほうのメスにより多く栄養が分配されるように栄養交換がなされ、徐々に体重差は小さくなっていく。片方が死んでしまうと、残された個体もほぼ確実に死亡する(図23)。

---中略---
もっとも、二雌ペアはただのお人好しではない。一夫一妻で巣をつくる場合、メスとオスでどちらが繁殖するかという対立はないが、二雌ペアではその点でもろに対立する。ためしに四匹のメスで創設を開始させると、二匹のメスだけが生き残り、あとの二匹は殺される。一匹のパートナーさえいれば、余計な競争者を残すようなことはしないのだ。あるいは二雌ペアに、一匹のオスを加えてみるとどうなるか。あっという間に雌雄ペアができあがり、あぶれたメスは死んでしまう。安っぽいテレビドラマにでてきそうな話である。「私たち一生友達だよね。」と調子のいいことを言っていた女友達に彼氏ができたとたん……。どこの世でも、生き残って繁殖するということを巡って、何とも世知辛いやりとりが繰り広げられているのである

シロアリ 女王様、その手がありましたか! P44『3 カップル成立』 より

シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)

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