『シロアリ 女王様、その手がありましたか!』からの引用4
シロアリの世の世知辛い話です。前のポジションになって単独メスに出会い、後ろポジションのオスがいなくなって独りぼっちになった弱いオスはどうするのでしょうかね。頑張ってメスか単独オスを探すのでしょうか。切ない話です。
同性のタンデム歩行には、地上を歩行している間の天敵による捕食リスクを低くする効果があることが明らかになったのだ。上述のように、翅を捨てたシロアリが地上を歩行している間は、アリに捕食されるリスクがきわめて高い。しかし、アリは一度に一個体しか捕らえることができないため、二個体でタンデム歩行すれば、アリと遭遇しても、どちらか一方は捕食を免れることができる。二匹で歩くので、単独の時よりアリに出くわす確率は少し上がるのだが、それを差し引いても、タンデム歩行によって大幅に捕食されにくくなることがわかった。
つまり、強いほうのオスにしてみれば、相手のオスは、まさかの時に自分の身代わりとなってアリに食われてもらう人身御供なのだ。異性探索中に初めてオス同士が遭遇した場合、捕食されにくい後ろのポジションをめぐって争い、大きいほうが後ろのポジションを得る。そして、次に単独で歩くメスと出会ったときには、必ず強い後ろのほうのオスがメスを獲得するのである。
シロアリ 女王様、その手がありましたか! P37『3 カップル成立』 より
シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
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