『ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ』からの引用5
制御出来なくて脱皮しなくなったり小型化してしまう、ということが起きないシステムになっているのでしょう。制御出来ない、大きくなってしまった個体が有利になる、みたいな現象は起きないのでしょうかね。
器用なことに、脚を失ったアメリカザリガニは、速やかな再生のために脱皮を「前倒し」します。前出の中谷勇氏の実験で、脚を定期的に切ったアメリカザリガニは脱皮サイクルが早まることが確かめられたのです。また、ザリガニは数多くの脚をもっていますが、切り取った本数に応じて、たくさん切り取るほど脱皮の時期が早まりました。単純ながら、実に機能的な対応です。
脱皮を早めるもう一つの方法があります。アメリカザリガニの脱皮を制御しているのは、眼の付け根にある「眼柄」です。この柄を切り取ると正しく抑制されなくなり、脱皮の頻度は約四倍、一回の脱皮にともなう体の伸長率は約二倍になります。この両方の効果で、眼柄を切り取った個体の成長の速度は通常の八~一〇倍となり、切除を行っていないものと比較すると異常なほど大きくなります。
脱皮を促進するホルモンはファネルソンと呼ばれ、口の付け根付近から分泌されています。そのため、眼柄を切除したザリガニはホルモンのバランスが崩れるのか、口の付け根が肥大します。
ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ P66『3 勇姿に隠されたヒミツ』 より
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