『軽症うつ病』からの引用1
少し前に不安感の強い時期がありましたが、ここまでの感じではありませんでしたね。漠然とした不安、ではありましたが、理由はありましたので違っていたのでしょう。
不安といっても、読者が日頃お感じの、何か理由があって、たとえば試験とか試合とか間近にせまっての不安とは違う。理由のない、そして我慢しにくい不安なのです。
このような、健康人の不安と似て非なる不安がもっとも純粋なかたちでみられるのは、実はうつ病の場合でなく「不安神経症」の場合です。その場合は「外出するのがこわい」とか「人前へ出るとむやみに緊張してしまうので、ついつい対人関係を避ける」。もっと重くなると「突然心臓の動悸がはじまり手足もシビレてきて、今にも死んでしまうのでないか」という不安になります。これが特別に強くなる場合を「パニック障害」と私たちはよんでいます。
こうした一連の不安神経症の場合、いったんよくなった後にも多少とも「また心臓がとまらないか」「血圧はどうか」という心配が残り、たとえば身体の調子を過度に気にする状態が長くつづくことがよくあります。だから、こうした神経症の不安は、大まかにいって赤子のように気遣わないではおれなくさせる、そういう性質の不安なのです。
軽症うつ病 P91『第三章 身体と心の一定の「症状」』 より
- 作者: 笠原嘉
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