思考の消化器官

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『サバがトロより高くなる日』からの引用3

少し前の話ですが、失政のつけ、と書かれてはいますけれども、その国民も少なくとも消費者としては関係している訳で、つけを支払うのは仕方がないことだとは思います。

二〇〇一年、スペインのムルシアという町で開かれたICCATの年次会合で初めて、日本政府は「フィッシュロンダリング」という言葉を使い、これが日本で頻繁に行われていることを自ら認める演説を行った。
それまで自国の漁業者の行いがいかに正しいかを強調するばかりだったマグロの最大の消費国、日本が自国内で不正なマグロ流通の実態を初めて認めたことは関係者に驚きをもって迎えられた。アメリカの参加者の一人は「最初は何を言っているのか分からなかったが、日本の言っていることの意味が分かった瞬間は、雷に打たれたような衝撃だった」と回想している。

----中略----

日本政府はそれまで、「日本漁船が魚を乱獲している」との非難に激しく反論し「資源状況は悪化していない」と主張することが多かった。先に述べた「ミナミマグロ戦争」の背景にもこの主張があった。筆者はある水産庁の幹部に「日本漁業の辞書に『乱獲』という文字はない」と聞かされた記憶がある。
だが、日本政府も世界の流れに抗することができなくなり、行動計画とそこに定められた減船の受け入れを決める。六百六十三隻あったマグロ延縄漁船のほぼ二〇%に当たる百三十隻の減船を、一隻当たり二億二千万円の補償金を出して進めることになった。世界の情勢をみればいつかこのような日がくることは、筆者のような素人でも分かっていたことで、長い時間をかけて徐々に減船を進めてくれば、これほどの負担を迫られることはなかったろう。失政のつけを国民が払わされた形だ。

サバがトロより高くなる日 P57『第一章 乱獲の実態』 より

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