思考の消化器官

色々な感想文とか。生活のこととか。

『サバがトロより高くなる日』からの引用1

某土用の食材についても代用品が話題になりましたが、基本養殖だから大丈夫なのかな、と思う部分もあり、同時に焼き畑感を感じる部分もあり…。

危機を見えにくくしている第三の理由は、ある種の魚が捕れなくなったら、それに似た別の魚、それもだめになったらまた別の魚、と漁場だけでなく、捕る魚の種類もどんどん変化してきているという点だ。シシャモの代わりのカラフトシシャモ、チョウザメの代わりのランプフィッシュ、というように、人類は、次々と「代用品」を開拓してきた。これまで捕っていなかった魚を捕り始めた直後は、漁獲量が急激に増えることが知られており、これが既存の漁業資源の減少を、統計上、覆い隠す作用を持っていたというわけだ。
前ページのグラフは、北大西洋でのタラの仲間の漁獲量を示したものだ。最初に大量に捕られたタラ(アトランティック・コッド)が捕れなくなるにつれて、スケトウダラの漁獲量が増加、また、それが少なくなってくるにつれてブルーホワイティング(プタスダラ)という魚の漁獲量が増えていることが分かる。
ところが、漁獲量は同じでも、その質を詳しく見ると、漁業資源の変化が浮かびあがってくる。ポーリー博士は、各地の海で魚が捕れなくなるだけでなく、たとえ漁獲量が上がっていたとしても、捕れる魚の種類が、どんどん小さな魚、つまり食物連鎖の下部にある魚に移っていっているという現象をも、漁業データによって証明した。北大西洋の漁業データを基に、食物連鎖の上位にある種には五点、連鎖を下にゆくほど、四点、三点、二点と点数を低くして、その変化を見たところ、ほとんどの地域で年とともに、その点数が小さくなる傾向にあることが分かった。食物連鎖のトップにある大きな魚から、その餌になる中型の魚、そのまた餌になる小型の魚、小型の魚の餌になる軟体動物などの無脊椎動物、と人間の漁業の対象は、食物連鎖のピラミッドの下に下にと向かっていっている、という訳だ。「そのうち人間が食べるシーフードは、クラゲだけになってしまう」というのが、博士の警告だ。FAOは二〇〇四年、この現象が、北大西洋だけでなく、東南アジア周辺の海でも起こっているとの報告書を発表している。

サバがトロより高くなる日 P25『第一章 乱獲の実態』 より

サバがトロより高くなる日

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