『巨大翼竜は飛べたのか』からの引用4
繁殖していなかったとしても、海鳥が自然環境下で35年以上も生きていられることがある、ということに驚きました。イメージとして、4~5年くらいの寿命を想像していたので、随分と印象が変わりました。もちろん、卵、雛、若鳥の時期の死亡率は相当高いでしょうから、10年以上生きていられる個体自体が相当少ないのだとは思いますがね。
二〇〇六年には、我々が毎年付けているステンレス製のものとは明らかに異なる足輪を付けた個体が、三貫島繁殖地で発見された。今にも折れそうなくらいまですり減ったアルミ製足輪には、「環境庁」と刻印されていた。これは、二〇〇一年に「環境省」と名称が変更される以前に付けられた標識であることを意味している。「いったいこの鳥は何歳なのだろうか」。
早速、番号を山階鳥類研究所に問い合わせたところ、一九七四年に三貫島において亜成鳥ないし成鳥に付けられたものであることがわかった。巣立った後のオオミズナギドリは三年後に繁殖地に現れるようになるとされているので、この個体は少なくとも35歳以上となる。海鳥は一般に長寿と言われているが、実際にこのような高齢個体を目撃したのははじめてであった。35歳以上になってもまだ繁殖に参加していたのだろうか? この個体は巣の中で雛と一緒にいるところではなく、地上で捕獲されたために、残念ながら繁殖していたか否かは判別できなかった。
巨大翼竜は飛べたのか P194『第五章 樹に登らないオオミズナギドリ』 より

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