思考の消化器官

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『巨大翼竜は飛べたのか』からの引用2

Wikipediaのオオミズナギドリの項にはちゃんとどちらの立場も書かれてはいましたね。物事の理由を考えて拡大解釈をしてしまう、ということは色々なシーンでやってしまいがちなことな気がします。仮説の一つとして想像力を働かせることは良いとは思いますが、それを事実として思い込んでしまうようになるのは気を付けたいところです。

インターネット上で「オオミズナギドリ」と検索してみると数多くのサイトが見つかった。その多くで、離陸時に樹に登ることが本種の特徴として記載されていた。樹に登る様子を記した写真も数多く見つかった。YouTubeでは、動植物のドキュメンタリー映像制作で有名なデービッド・アッテンボロー(Dabid Attenborough)が伊豆の御蔵島で撮影した動画も見ることができた。
引き続き、鳥関係のことを記した本や論文からも情報を集めてみた。情報収集するうちに、着目するべきポイントがはっきりしてきた。まず、オオミズナギドリが離陸のために樹に登ることがあるのは確かであるようだ。ところが、樹に登ることに加えて、「オオミズナギドリは地上から離陸できない」といった記述がしばしば見られた。これが事実に反している。私が三貫島で見たとおり、オオミズナギドリは地上から直接離陸できる。
後日、確認のためにオオミズナギドリ2羽を島から運んできて、海岸付近の広い公園から放鳥してみた。鳥は開けたところに置かれて戸惑った様子を見せたが、ちょっと走って軽やかに飛び立って行った。
『樹に登る海鳥』と題する本がある。一九八一年に出版されたこの本を記した吉田直敏さんは、京都府舞鶴市の冠島で長年オオミズナギドリ調査を行ってきた。本の内容はオオミズナギドリの生態に関する詳細な記述だ。
この本の中には、大半の鳥が樹に登ることに加え、1から2メートルくらいの高さを持った岩石から飛び立つことなども記されており、地上から離陸できないとは記されていない。しかし、同じ吉田さんが一九六二年に記した論文「舞鶴市冠島におけるオオミズナギドリの生態」(鳥 17: 83-107)では、「オオミズナギドリの出発は他の鳥と異なり、地上からはほとんどそのまま飛び立つことができない。飛び立つには高い木に登るか、障害物のないひらけたところの斜面や岩の上に出てからでないと出発できない」と記している。吉田さん自身、オオミズナギドリが地上から離陸できないと思っていたのか、地上からも離陸できると思っていたのか、著作物からは判別できない。

巨大翼竜は飛べたのか P177『第五章 樹に登らないオオミズナギドリ』 より

巨大翼竜は飛べたのか?スケールと行動の動物学 (平凡社新書)

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