『巨大翼竜は飛べたのか』からの引用1
科学だけではないだろうけど、これは本当にそう思いますね。だから、もう少し地位か名誉かわからないけど、何かしら見返りがあってもいいなあ、と思うんですけれども、報われている感が外から見ていても感じられないんですよね。
日本経済が不況に陥って以来、科学研究費は伸び悩んでいる。そのしわ寄せを受けつつも、研究最前線にいる学生たちの捨て身の努力によって日本の科学はかろうじて救われているといったところだろうか。
昔の探検家は知的好奇心に突き動かされ、命がけで探検に出かけていった。地球上に人跡未踏の地がなくなり、世の中は安全志向になった。費用対効果などという嫌な言葉も聞こえてくる。そんな時代に冒険家という人種は絶滅したのだろうか?
いやいや、探検家は「大学院生」と名を変えて今の世の中にしぶとく生き延びている。山や海で遭難死する危険性は探検家ほど高くないが、大学院生は人生最良の二〇代の大半を費やして日々黙々と動物生態調査に打ち込んでいる。結果的に民間企業へ就職する機会を逸しているわけで、人生という数十年の時間スケールで見た場合、探検家と大学院生の抱えるリスクは同質のものだ。大学院生とは、己の人生をかけて知的挑戦を続ける現代の探検家なのだ。
巨大翼竜は飛べたのか P138『第三章 マンボウも、やるときはやる』 より
巨大翼竜は飛べたのか?スケールと行動の動物学 (平凡社新書)
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