『粘菌 その驚くべき知性』からの引用1
粘菌でも必要とする物をいっぱい食べようとするのですから、人間が食べたい物をたくさん食べてしまうことは、身体が必要としているからで、当然ですよねえ、とかとか。
オートミールとアミノ酸混合物(ミルクのタンパク質カゼインをアミノ酸に分解したカザミノ酸)で飼育した粘菌は、アミノ酸にもオートミールにもそれなりに寄り集まります。一方、オートミールのみで飼育した粘菌(窒素源であるアミノ酸欠乏状態)は、オートミールにはそこそこにしか集まりませんが、アミノ酸には盛んに集まります。アミノ酸混合物だけで飼うと(主に炭素源であるオートミールの欠乏状態)、アミノ酸にはそこそこに、オートミールには活発に集まります。自分に必要なものを心得ていて、それをちゃんと積極的に求めるのです。
そもそも、絶食させた後にオートミールを与えると活発に寄り集まってきますが、十分オートミールを与えた直後ではオートミールにはそれほど集まりません。お腹が減っているか、お腹がいっぱいかで、食いつき方がまるで違うのです。こういう振る舞いを見ていると、やっぱり単細胞だって同じ生きものなんだなと実感します。
これは化学物質が体に直接触れることで起きる反応ですから、いわば粘菌の有する味覚能力といえるでしょう。
粘菌 その驚くべき知性 P48『第2章 粘菌とはどんな生きもの?』 より
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