『親指はなぜ太いのか』からの引用4
盲腸のサイズを想定して主食の絞り込み。現生人類は主食としてかなり高カロリーなものを食べているんだよなあ、ということを思い出しますね。
現生のヒトとオマキザルとアイアイはその体の大きさに比較して盲腸があきらかに小さい。食物繊維を分解する機能をもつ盲腸がこれほど小さいのは、霊長類では例外的で、むしろ肉食獣の盲腸に近い。オマキザルとアイアイの主食が消化のよいカロリーの高いものだったように、現代人の主食は、それが肉であれ、米であれ、果実や葉よりもカロリーが高い。水を入れて炊いた玄米のご飯でさえ100グラムあたり153キロカロリーで、リンゴなどの果実の3倍のエネルギーがある。この小さな盲腸が食物繊維を分解する必要がさほどない、高いカロリーの主食に対応していることはあきらかである。
しかし、これは現代人の盲腸であり、その食物である。初期人類の盲腸はわからないので、ただちにその食物が同じ高いカロリーのものだったかどうか、断定できない。しかし、初期人類の主食を推定する場合、初期人類の盲腸が小さかったかもしれない、ということがしぼりこみの条件として考えられる。
初期人類のような、平均体重40キログラムの動物にはきびしい条件がまっている。ある程度の低カロリーの食物でも生きてゆけるが、草や木の葉のような低カロリーの食物では生きてゆけないし、まとまった量の食物がなければこの体を維持できない。平均40キログラムという体重を選んだ場合、ある特別な条件が満たされないと、絶滅する可能性もはらんでいる。初期人類の体重は、現代人の体重とほとんど同じなので、現代人の食物から類推して高いエネルギーの食物をとったのではないか、と考えることができる。
親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る P164『第7章 初期人類の主食は何か?』 より
- 作者: 島泰三
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