『親指はなぜ太いのか』からの引用1
フン食で粉飾…。不器用な動物も少なくないのですね。自分のフンなら競合も少ないでしょうから、生存戦略的にこれが正解なのでしょうけれども。
イタチキツネザルはこの葉を1晩に61・5グラム食べて13・5キロカロリーを得るが、このサルの1日の基礎代謝量(安静にしているときの代謝量)は20~30キロカロリーだから、まったくカロリー不足である。この絶対的なカロリー不足を補うために、イタチキツネザルたちが取った方法は、実にユニークなものだった。
まず、イタチキツネザルは日中に休眠して、基礎代謝量を40パーセントも下げている。さらに、夜間もほとんど動かず、移動を最小限にして、基礎代謝量の10パーセント以内(約2・2キロカロリー)に抑えている。引き下げた日中基礎代謝量(14・5~21・8キロカロリー)と移動エネルギーの合計は、16・7~24キロカロリーで、ふつうの食事だけではまだ赤字である。
このエネルギー収支の絶対的赤字を、イタチキツネザルはフン食で埋める。いや、粉飾決済というわけではない。他の葉食者にくらべると、「イタチキツネザルの小腸は極端に短いので、1回の消化器官通過では十分に食物内容物を摂取できない」が、食べた葉が小腸に続く盲腸と大腸を通るあいだに、そこにすむバクテリア類によってセルロースの一部は分解され、たんぱく質を最大45・8パーセントにまで増やしている。これは小腸から吸収できる物質に変わっているので、もういちど食べれば栄養になる。これがフン食の理由である。
親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る P38『第2章 レムール類の特別な形と主食のバラエティー』 より
- 作者: 島泰三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/08
- メディア: 新書
- 購入: 6人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (25件) を見る