『生物から見た世界』からの引用3
一昔前だったら気にしないで生きていられただろうけど、現在では写真だったり映像だったりを個人で扱うので、わりと気にすることも多いお話ですね。
瞬間の連続である時間は、同じタイム・スパン内に主体が体験する瞬間の数に応じて、それぞれの環世界ごとに異なっている。瞬間は、分割できない最小の時間の器である。なぜなら、それは分割できない基本的知覚、いわゆる瞬間記号を表したものだからである。すでに述べたように、人間にとって一瞬の長さは一八分の一秒である。しかも、あらゆる感覚に同じ瞬間記号が伴うので、どの感覚領域でも瞬間は同じである。
一秒に一八回以上の空気振動は聞き分けられず、単一の音として聞こえる。
一秒に一八回以上皮膚をつつくと、一様な圧迫として感じることもわかった。
映画では、われわれが慣れている速度で外界の動きをスクリーンに映しだすことができる。そのとき、個々のこまは一八分の一秒の速さで次つぎに送られている。
われわれの目にとって速すぎる運動を追うには、高速撮影を利用すればよい。
高速撮影とは、一秒のこま数を増やして撮影し、それを通常の速さで映写する方法を言う。そうすると、その運動過程は通常より長いタイム・スパンに引き延ばされ、それによって、鳥や昆虫の羽ばたきなど、われわれ人間の時間速度(一秒に一八)にとって速すぎる現象が目に見えるようになる。高速撮影で運動過程を遅らせるのと同様、低速撮影でそれを速めることができる。花の開花のようにわれわれにとってのろすぎる現象を一時間に一回ずつ撮影して一八分の一秒の速さで映写すると、それが短いスパンに圧縮され、われわれにも観察が可能になる。
生物から見た世界 P53『3章 知覚時間』 より

- 作者: ユクスキュル,クリサート,Jakob von Uexk¨ull,日高敏隆,羽田節子
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