『ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係』からの引用4
人間に当てはめて考えてはいけない、と思いつつも擬人化して想像すると色々と面白すぎます。
群れの大多数の個体は、働きデバや兵隊デバとして女王に仕えている(図11・12)。働きデバの仕事は餌探し、巣の拡張と清掃(土や植物の根を取り除く)、子育ての手伝いなど多岐にわたる。一方、兵隊デバは、普段はあまり働かずに巣でゴロゴロしている。彼らが活躍するのは、トンネル内に他の群れから来たデバや、捕食者であるヘビが侵入したときだ。
兵隊は、積極的に戦うというより、自ら犠牲になってコロニーを救う。天敵のヘビがトンネルの中に入ってきたとき、まっさきにヘビに向かって食べられてしまうのがおもな仕事である。遺伝子共有率がとても高いので、このような自己犠牲的な行動があらわれてくるのだ。もちろん、兵隊だって食べられるのはいやだから、いちおう敵を攻撃するのだが。侵入者が他の群れのデバだった場合は、戦ったりトンネルを封鎖したりして、これを撃退する。
これら二種類の役割は、やはり生まれつき決まっているのではないらしい。また、アリやハチのように、外見から容易にわかるほど分業が確立しているわけでもない。役割分担は体の大きさや、群れの仲間との関係に応じて変化してゆくのである。
雌雄ともにすべての仔は生後1ヵ月ほどで離乳し、まず働きデバになる。最初はどういうわけか全員
「働きたい!」
という衝動に突き動かされるらしい。といっても体が小さいうちは満足に働けるわけでもなく、巣材の木屑を一片だけ口にくわえて巣に持ち帰るのがやっとな有様だが、徐々に一人前の働きデバになる。そして、さらに成長し、ちょうどそのとき兵隊の数が不足していると労働に費やす時間が短くなり、「兵隊」的な行動を示すようになるのだ。
ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 P35『3 デバのくらし』 より
ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー 生きもの)
- 作者: 吉田重人,岡ノ谷一夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/11/06
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 60回
- この商品を含むブログ (24件) を見る