『ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係』からの引用2
どの動物にしても女王ポジションは大変そうですけどね。人間にしても相当大変そうです。富という側面では恵まれているかもしれませんけれども。
じつは、デバの女王は、生まれながらの女王ではない。アリやハチの女王のように、特別な栄養を与えられ、ぬくぬくと育てられたのではない。厳しい戦いを勝ち抜き、ようやく女王の座を得たのである。たとえ女王になれたからといって、気を抜くわけにはいかない。将来、自身の地位を狙うであろうライバルたちが力をつける前に、叩いておかなければならない。女王は常に巣穴をパトロールして、ライバルたちを威嚇して回る。そうやって自分以外の繁殖能力を抑制しているのだ。
階級の異なる個体間で、ストレスホルモン値を比較した研究では、女王の受けているストレスがもっとも高く、次いでライバルとなる第二位メスの値が高いという結果が得られた。また、僕たちの研究室でおこなった行動観察では、群れの中で女王の睡眠時間が一番少ないことがわかった。
そんな気苦労の絶えない生活を送っている女王だが、その末路もさびしい。病死するか、下克上によってその座を追われて命を落とすしかないのである。女王も楽じゃない。
ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 P32『3 デバのくらし』 より
ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー 生きもの)
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