『人体 失敗の進化史』からの引用7
この著者の著作にはだいたい毎回こういった熱い語りが入るのが結構好きです。ここでは隣国の事例を挙げていますが、残念ながら日本でも同様の問題が起きて大問題になってしまいましたよね。個人の問題とするよりはここにあるように為政者、ひいては社会全体の問題とするべきだろうな、と私も思います*1。
いまの時代に、”評価”や”競争”なるものは、真に意義深い評価や競争とはまったく異なり、短期間に動かしたお金や特許の量や、発見を発表する場の格付けに依存して、上から設定されるものになってしまった。それは、お隣韓国のヒトES細胞騒ぎで見られたように、平気で嘘をつくような人間を生み出すような、誤った治世だと私には信じられる。科学者の心を壊し、大学を荒ませている責任は、科学者自身よりはるかに以前に、”競争”をあおってばかりの、今日の為政者の本質に根付いているものだ。
「動物の遺体とその周囲に生きる人間を、短絡的な物差しから守ってあげたい」
それが私の祈りだ。なぜなら、遺体は、時の力や金儲けの道具であってはならないからだ。遺体が、嘘の”評価”や偽りの”競争”の力で、棄てられていくことを許したくないからだ。
人体 失敗の進化史 P238『終章 知の宝庫』 より

- 作者: 遠藤秀紀
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/06/16
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*1:とはいえ…と言いたくなる部分があるのは間違いありませんが