思考の消化器官

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『あの演説はなぜ人を動かしたのか』からの引用

演説する側に立つ人は多くないと思いますので、聞き手側として注意しておくことの方が重要かもしれません。歴史に残るほどに本当に巧みな人は、注意していてもその注意をアッサリと突破してしまう演説をするのだとは思いますけれどもね。

このように、聴衆を主人公にしたストーリーを語りつつ、自分のストーリーを巧みに織り込んでいく手法は、うまく機能すると、人の心を動かし、また自分に対する信頼も勝ち得ることができるのです。
逆に聞き手側の立場にたつと、このような手法で演説されると、話し手に思いもよらない権限を与えてしまう可能性もあることを注意する必要があります。
このルーズベルトの演説の約一ヵ月前の一九三三年二月十日、ヨーロッパのドイツで、よく似た構成の演説が行われました。ナチスが選挙により政権を取り、首相に就任したアドルフ・ヒトラーはその就任演説で、ドイツ復興とヒトラー自身の二つのストーリーを巧みに絡み合わせ、自分に大きな権限を与えるように国民に問いかけたのです。「我々に四年の歳月を与えよ。しかる後に我々を判断せよ」と。
そして多くのドイツ国民は、ヒトラーに絶大な権限を与えることを容認してしまいます。それがきっかけになって、歴史の悲劇が引き起こされたことはみなさんもご存じでしょう。

あの演説はなぜ人を動かしたのか P173『第6章 フランクリン・ルーズベルト 大統領就任演説』 より

あの演説はなぜ人を動かしたのか (PHP新書)

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